眼精疲労とは
目の充血や痛み、視界のかすみやぼやけ、まぶしさを強く感じるといった症状があり、休息や睡眠をとっても十分に回復しない状態です。放置していると、慢性的な肩こりや頭痛、めまい、吐き気といった全身症状を起こすことも珍しくありません。
パソコンやスマートフォンを日常的に長時間使用する方が増えて、眼精疲労でお悩みの方は増加傾向にあります。近距離にある画面を見つめますので、ピントを調整するための筋肉が絶えず緊張状態を続けて大きな負担になります。また、集中することでまばたきが減り、目の表面が乾いてダメージを受けやすいドライアイになって目への負担がさらに増します。また、眼科疾患が原因になって眼精疲労が症状として現れている場合もあります。
目の疲れがなかなか抜けないことに気付いたら、早めに眼科を受診してください。
症状
目の症状に加え、それ以外の部分にも症状が及ぶことが少なくありません。下記のような症状があるようでしたらご相談ください。
目の症状
- ピントを合わせにくい
- 目がショボショボする
- 目の奥が痛い
- 目がかすむ
- 視界がぼやける
- 視点を移動させると、ピントが合うまでに時間がかかる
- 目が充血する
- 目が乾く
- まぶしさを強く感じる
- 常に涙が出やすい
目以外の症状
- 肩や首がこる
- 頭痛
- めまいやふらつき
- 吐き気
- 倦怠感
眼精疲労の原因
眼の酷使も眼精疲労の原因の一つですが、それ以外にもさまざまな要因が複合的に作用して生じているケースも多くなっています。ドライアイなど目の病気、さまざまな身体の病気、眼鏡やコンタクトレンズ、環境、姿勢などの生活習慣、ストレスなどが眼精疲労の主な要因です。
目の病気
ドライアイ
涙は眼の表面を潤して保護し、栄養や酸素を届けています。涙の不足や成分バランスの変化によって目の表面が乾燥した状態がドライアイです。ドライアイになると目が傷付きやすくなり、感染症リスクも上昇します。実際に眼精疲労で受診した方の約6割にドライアイが認められるとのデータもあります。
白内障
目の中でレンズのようなピント合わせの役割を担っている水晶体が加齢などによって濁ってしまっている状態です。視界がぼやけて見えにくくなり、光が濁ることによって乱反射するためまぶしさを強く感じるようになり、目が疲れやすくなります。白内障は手術でクリアな視界を取り戻すことができる疾患ですが、手術前の見え方との変化が大きいとそのギャップでしばらくの間、眼精疲労の症状を起こすこともあります。
緑内障
眼圧上昇や血流不足などさまざまな原因によって脳へ視覚情報を送る視神経に障害が起こり、視野が欠けてしまう疾患です。進行すると視野の欠けが広がっていって失明に至ることもあります。欠損した視野を補うために目が酷使されて眼精疲労を起こすことがあります。
眼瞼下垂
まぶたを開くための筋肉がゆるんだり、皮膚がたるむことでまぶたを開きにくくなっている状態です。加齢やコンタクトレンズの長期間使用などによって生じます。視界が狭まって見えにくいため、周囲の筋肉にも力が入り、眼精疲労につながります。
屈折異常・斜視
近視、遠視、乱視、老視(老眼)などの屈折異常や斜視は、目に大きな負担をかけるため眼精疲労のリスクになります。
老視(老眼)
加齢によってレンズの役割を果たしている水晶体が弾力性を失うと、ピント調整機能が低下して近くのものが見えにくくなり、眼精疲労につながります。ゆっくり進行するため、眼精疲労がかなり悪化するまで気付かないことがあります。
身体の病気
風邪やインフルエンザといった感染症、虫歯や歯周病、高血圧、糖尿病、副鼻腔炎(蓄膿症)、更年期障害など、幅広い疾患が眼精疲労の発症や進行に関与していることがあります。
眼鏡やコンタクトレンズ
近視や遠視、乱視、老視が進み、合わなくなった眼鏡やコンタクトレンズを使っていると、目の酷使によって眼精疲労を起こしやすくなります。また、左右の視力差が大きい場合、眼鏡で矯正すると像の大きさに左右差ができて、それが原因で眼精疲労を起こしているケースもあります。
環境
パソコンやスマートフォン、タブレットの画面を長時間見続けることや暗いところ等の不適切な場所で見ることで起こる眼精疲労はVDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群と呼ばれています。近距離での長時間に及ぶピント合わせや、集中によるまばたき回数の著しい減少によって眼精疲労が短時間で悪化しやすい傾向があります。
また、エアコンが普及したことで室内の乾燥が進み、風が顔に直接当たることで重度のドライアイになり、それによって深刻な眼精疲労の症状を起こすこともあります。
デスクやモニター画面の角度や高さなども目の疲れを大きく左右します。
ストレス
過度のストレスは筋肉を緊張させて血流を悪化させやすいため、眼精疲労発症のリスクとなります。
眼精疲労の治療
まずは眼科を受診して原因となる眼科疾患がないかを調べることが重要です。原因疾患がある場合には、その治療をしっかり行うことで、眼精疲労の根本的な解決につながります。
原因疾患がない場合でも、眼科専門医を受診することで適切な治療や環境改善に向けたアドバイスを受けて、つらい症状を効果的に緩和させることができます。眼鏡やコンタクトレンズが合っていないことで悪化している場合は、眼科で専門的な検査を受けることでより負担の少ない処方が可能になります。
また、目以外の疾患が疑われる場合には、適切な医療機関を紹介して、スムーズに最適な治療につなげています。
眼精疲労の対策
生活環境の改善
エアコンやサーキュレーターの風が顔に当たる場合には、席の移動や風よけの設置といった対策が有効です。
デスクやイスの高さ、モニター画面の角度、照明や外光の反射などへの配慮も目への負担を軽減できます。また、スマートフォンやパソコンは、コントラストや輝度を目に優しい設定にするのも有効です。
また、パソコン作業などでは、まずは適切に休憩時間をはさんでください。姿勢が正しくなるようイスの高さを調整することも大切です。高さ調整は、クッションなどでも微調整できます。
ドライアイを防ぐために意識的にまばたきの回数を増やし、仕事中も目を閉じる・ストレッチをするなど目を休める時間を定期的につくりましょう。
できれば毎日入浴して、バスタブで身体の芯まで温まるようにしてください。また、蒸しタオルなどで目を温めるホットパックもお勧めできます。
ストレスの解消
日ごとのストレスは入浴や軽い散歩・ストレッチなどで、週ごとのストレスは趣味やスポーツなどでリセットしましょう。楽しめる時間や、リラックスできるプライベート空間をつくって気持ちを切り替えやすくするのも有効です。眼精疲労の症状が進行すると心身を消耗させ、それで無理をすると余計に症状が悪化することがよくあります。こうした工夫で解消できないストレスがある場合には、専門医やカウンセラーに相談することもお勧めできます。