ドライアイとは
目の表面が乾いてしまう病気・状態がドライアイです。涙の量が少ないことだけを指しているのではなく、目の表面での涙の蒸発が早かったりすることも原因となります。涙がたくさん出てしまう症状を起こすこともあります。
ドライアイは目の表面全体の一部で涙が不足したり、涙の質が変化すると潤いが保持できない部分が生じてドライアイを発症することがあります。こうした状態のドライアイでは、涙目でショボショボしているケースもよくあります。
ドライアイの適切な治療のためには、涙の量だけでなく、質を正確に把握することが不可欠です。また、目の表面、まぶたの裏、まつげの生え際などの状態の観察も重要です。
ドライアイになると目が乾いてつらい症状を起こし、目の疲れによる眼精疲労を起こしやすくなります。さらに、目の表面が乾くことで傷付きやすくなり、視力が低下したり、角膜炎や結膜炎等の眼科疾患の発症リスクも上昇してしまいます。
原因
生活習慣の関与
目の表面の涙液量不足は、涙の分泌低下と涙の蒸発量増加が大きく影響します。空気の乾燥、まばたきの問題、コンタクトレンズ、パソコンやスマートフォンの長時間使用など、生活習慣はドライアイの発症や進行に大きく関わっています。
空気の乾燥
空気が乾燥していると涙の蒸発量が増加してドライアイの発症や症状の悪化につながります。湿度が低い冬だけでなく、現在はエアコンが普及して夏場も室内は空気が乾燥していることが多く、注意が必要です。
まばたき
人間は3秒に1回程度、無意識にまばたきを行っているとされています。ただし、集中しているとまばたきの回数が大幅に減少します。パソコンやスマートフォンを使っている際には集中しているため、まばたきの回数が大幅に減ってしまい、ドライアイや眼精疲労のリスクが上昇し、悪化した場合には重い頭痛やめまいなどを伴うVDT症候群を発症します。
また、まばたきを十分な回数行っていても、完全にまぶたが閉じない不完全なまばたきが癖になっていると、下の方に涙が不足して乾きやすくなります。
コンタクトレンズの装着
コンタクトレンズが水をはじいて目が乾燥することがあります。角膜が絶えず覆われて感度が鈍り、まばたきが不完全になって涙が不足します。また、レンズの汚れや傷が涙の成分変化に影響し、涙の粘度を上げるムチン不足によって乾燥しやすくなることもあります。
加齢
高齢になると涙の分泌量が減るため、ドライアイを発症しやすくなります。
疾患などが関与したドライアイ
シェーグレン症候群
目、口、鼻などの粘膜が乾燥する疾患で、中年女性の発症が多いとされています。関節痛の症状を起こすこともあります。涙の分泌がほとんどなくなって、ドライアイが悪化します。
マイボーム腺が詰まる
涙の蒸発を防ぐ油層の成分を分泌するマイボーム腺が詰まり、油分不足によって涙の蒸発が促進されてドライアイを発症します。
結膜炎など
花粉症などによるアレルギー性結膜炎では、結膜からのムチン分泌が減ります。ムチンは涙に粘性を持たせる成分であり、不足すると乾燥による蒸発が進み、ドライアイにつながります。
症状
- 目が乾く
- 目の痛み、かゆみがある
- 目が疲れやすい
- 目がゴロゴロする
- 目に不快感がある
- 目に異物感がある
- 目やにが増えた
- 理由なく涙が出る
- 目がショボショボする
- まばたきしにくい
- 白目が充血している
- 光が以前よりまぶしく感じる
- 視界がかすむ
- ピントを合わせにくいことがある
など
ドライアイの検査
視力検査
眼科の基本的な検査であり、ドライアイの発症に関与する疾患の有無の判断に役立ちます。
細隙灯顕微鏡検査
幅の狭い光を眼球に当てて顕微鏡によって観察し、肉眼ではわからない角膜の微細な異常も発見できます。フルオレセインという試薬で涙を着色してから行います。
BUT検査
まばたきして目を開き、目の表面を覆う涙の膜が破壊されるまでの時間を計測します。5秒以下の場合には、涙の質変化によるドライアイの可能性があります。
シルマー検査
下まぶたの端に目盛のある専用試験紙を挿入して、5分間経過後に目盛のどこまで涙で濡れたかを調べ、涙の量を計測します。5mm以下の場合には、涙の量不足によるドライアイが疑われます。試験紙挿入の刺激で涙が出る場合には、点眼麻酔を行ってから計測するシルマーテスト変法が用いられます。
ドライアイの治療方法
目薬による治療だけでなく、涙の排出量を減らして十分な涙を確保する涙点プラグによる治療も行っています。
また、マイボーム腺が詰まることが原因で生じている場合にはその治療も行います。
目薬
ドライアイの原因や患者様の眼の状態に合わせて、涙に近い成分の人口涙液、粘性と水分保持に優れたヒアルロン酸ナトリウムを主成分にした角結膜上皮障害治療薬、ムチンや水分の分泌を促す成分の目薬などを処方しています。
ヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン・ティアバランス)
涙を目の表面に保持しやすい粘度の高さと角膜上皮細胞の傷を治癒促進するヒアルロン酸ナトリウムを主成分とした目薬です。ドライアイ以外にも幅広い眼科疾患や外傷、コンタクトレンズによる障害の治療に使われています。
ジクアス
ジクアスムチンが主成分で、角結膜上皮の障害を改善し、涙の質を保つ効果が期待できます。ムチンは粘度が高く、水分分泌を促進させるため、涙の質や量の改善効果が期待できます。
ムコスタ
ムコスタレバミピドが主成分で、ムチン産生を促進して涙の状態を安定させ、角結膜上皮の障害改善にもつながります。白い水性懸濁液ですから、沈殿した成分を均一に分散させるため点眼前に容器を強くはじく必要があり、点眼後は一時的に視界が白っぽくかすみます。コンタクトレンズを装着したまま点眼すると有効成分を吸着する可能性があるなど、使用に対する注意をしっかり守ることが重要です。胃薬と同成分であり、点眼後苦い感じがしますが、目薬の成分が喉に流れて苦味を感じることが関係しており問題はありません。
涙点プラグ
軽度のドライアイは、適切な目薬の使用によって症状の改善可能なケースが多いのですが、目薬がかなり進化した現在でも涙に含まれる成分をすべて自然な形で補給することはできません。涙が不足してドライアイを発症している場合、涙を排出させなければ十分な涙の確保が可能です。そこから開発されたのが、涙の排出口である涙点を塞いで涙を排出させないようにする涙点プラグによる治療です。
点眼麻酔によって痛みなく治療可能なシリコン製プラグ、痛みや刺激のほとんどない液体コラーゲンプラグがあり、短時間で挿入が可能です。シリコン製プラグは半永久的に使うことができます。液体コラーゲンプラグは人間の身体にある自然な成分でできていて、体温でゲル状に固まることから抜けてしまうことがなく、2か月程度で分解されます。液体コラーゲンプラグは再度の挿入も可能ですが、比較的短期間で解消が見込める場合に適しています。
マイボーム腺不全の治療
涙は、表面の油層、中心の水層、眼球に接しているムチン層の3層に分けられます。マイボーム腺は涙の油層となる脂を分泌していて、この油層が涙の蒸発を防いでいます。マイボーム腺の機能が低下すると脂が変性してマイボーム腺の出口で固まってしまうマイボーム腺機能不全を起こし、涙の油層が不十分になって蒸発しやすくなります。当院ではマイボーム腺機能不全に対して、IPL治療、温めてマッサージする温罨法(おんあんぽう)とまぶたを洗浄するリッドハイジーンによって治療する一般的な治療法があります。
IPL治療
当院のIPL治療では、フォトフェイシャルM22を使用します。治療時には、マイボーム腺周辺の皮膚に光エネルギーを照射します。光エネルギーは、マイボーム腺内の脂質を溶かし、腺の通り道を改善する効果があります。